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ユーザエクスペリエンスの概念や視点を「UX白書」から読み解く

こんにちは、平野です。

今回は、ユーザエクスペリエンス(UX)について「UX白書」の内容に触れながら考えてみます。

UX白書とは?

・2010年9月15~18日にドイツのDagstulで行われたUXセミナーの成果をまとめたものです。

・様々な解釈で語られていたUXについて、共通の認識を形成すべく、
 専門家(研究者、実務家)30名が「UXの概念」について議論しました。

・その後、2011年2月に英語版が公開されました。
 hcdvalueの有志が日本語訳を行い、日本語公式訳として2011年12月に公開しました。

 ■公開資料 - hcdvalue
(本文での文章の引用及び図版はhcdvalue日本語訳より引用しています。)


それでは、内容を見てみましょう。

はじめに


ユーザエクスペリエンス(UX)という用語は広く使われていますが、多くの異なる意味で理解されています。UXは多くの専門分野にわたるという特徴を持つため、いくつかのUXの定義とUXに関する視点が存在しており、それらは異なる観点からUXという概念にアプローチしています。(中略) そのため、一つの定義ですべての視点を言い表すことはできません。

「UXはこうだ!」とは言えないと書かれています。
その代わり、UX白書では概念を説明した上で、UXに対する異なる視点について明確化しています。

1. 序論

UXとは、異なった3つの視点から捉えることができると書かれています。

  • 現象としての UX - 何がUXなのか

  • 研究分野としての UX - 研究領域としてのUX

  • 実践としての UX - どのようにUXをデザインするのか

UX白書では、「現象としてのUX」と「実践としてのUX」に焦点が当てられています。

2. 現象としてのUX

「ユーザエクスペリエンス」という言葉は「システムの利用を通じて人々が持つ経験」を指しており、「経験」よりも適用範囲が狭いですが、ユーザエクスペリエンスに関するいくつかの概念を包括した用語です。

UXについて言及する場合に良く取り上げる3つの視点が挙げられています。

・経験する(Experiencing)
- システムと出会う経験に関する個人的及び動的な性質を重視

・ある経験(A user experience)
- 経験の結果と記憶を重視

・共経験(Co-experience)
- システムの出会いだけではなく、構成している人間やある状況を一緒に経験する人間を重視

これらの用語が経験における特定のシステムの役割を考慮せずに使われる場合は、「ユーザエクスペリエンス」についての議論として意味をなさず、一般的な意味合いでの「経験」と呼ぶ方が適切となるようです。

3. ユーザエクスペリエンスの期間

ユーザーが実際に利用した経験は、UXの中心となるものです。
ただし、それだけではUXに関連するすべての要素をカバーしているとは言えないのです。

UX白書には以下のように書かれています。


人々は最初の出会いを果たす以前に、過去の経験や関連するテクノロジー、ブランド、広告、プレゼンテーション、デモンストレーション、他人の意見などによって形成される利用前の期待から、間接的な経験を得ることができます。同様に、利用した後に行う振り返り、またはその人の中の評価の変化を経て、間接的な経験は拡張されていきます。

つまり、システムを利用している間だけではなく、利用する前後の経験もUXに含まれるということです。
システムを利用する前というのは、他人のレビューや使用動画により実際に使ったような気持ちになれるといったことが例でしょうか。

また、UXにおいて経験のどこに焦点を当てるかによって大きく変わります。 それを説明しているのが以下の図です。

f:id:ryuji1224:20170608194414p:plain 引用:■公開資料 - hcdvalue
縦軸が時間で、色の薄い部分が「非利用期間」濃い部分が「利用期間」です。

この図でもあるように「非利用期間」、つまり使用していない期間の経験もUXに含まれるのです。
使用していなくても経験は動的なので、あらゆる情報が入って蓄積されていきます。


先ほども言いましたが、UXは経験の中でどこに焦点を当てるかによって変わってきます。
多様なUXの中でどこに焦点を当てるかのパターンが以下の図です。

f:id:ryuji1224:20170608194528p:plain 引用:■公開資料 - hcdvalue


・予期的UX
- システムを使う前の経験や他のシステムを使用してきた過去の経験
(口コミ、レビューなどシステムを使用する前の情報によって得られる間接的経験などです。)

・一時的UX
- インタラクション中に感じる感情の特定の変化
(よくUI/UXなどで使われるUXデザインはこのへんにあたります。
 心地よいインターフェースやインタラクションなどです。)

・エピソード的UX
- ある特定の利用エピソードに関する評価
(タスク寄りで、ユーザーがゴールを持ったときに適切にいくかどうかに関係することです。)

・累積的UX
- 特定のシステムをしばらくの期間利用した後の見方
(ブランドやシステムイメージなどです。
 累積的な経験なので使用していない期間も含まれています。)



4つのパターンを挙げましたが、これは4つでUX全部を分類できるものではありません。

一時的UX自体がエピソード的UXにも影響しますし、他の一時的UXそのものにも影響します。
これらを含めて累積UXになります。
また、これを廃棄すると次の予期的UX全体に影響します。
このように4つのパターンは包含関係にあるのです。

この章で伝えたかったことをまとめますと、UXについて議論したり話したりする時には、対象とする期間を明確にすることが重要だということです。

4. ユーザエクスペリエンスに影響する要素

システムを通じて人々が持つ経験は、さまざまな要素の影響を受けるため動的です。

その影響は幅広いですが、3つの主なカテゴリに分類できます。

1. 文脈

文脈が変われば、システムが変わらなくともUXは変化します。
- 社会的な文脈(例:他の人と一緒に使うこと)
- 物理的な文脈(例:ある製品を机の上で使うのか、でこぼこ道を走るバスの中で使うのか)
- 仕事の文脈(システムを取り巻く仕事で、他にも注意する必要があるもの)
- 技術や情報の文脈(例:ネットワークサービスや他の製品との連携など)

2. ユーザー

人がシステムを体験することが動的であるため、UXも動的なものになります。
- ある製品を使おうとするモチベーション
- 雰囲気
- そのときの心理的状態・身体的状態
- 期待

3. システム

システムの特性に対するユーザーの知覚・認識は自然とUXに影響を及ぼします。
- ブランドイメージや製造業者のイメージ(例:持続可能性や格好良さ)
- システムデザイン(例:機能性、審美性、デザインされたインタラクティブな振る舞い、反応性)
- ユーザーが加えたりシステムを変更したり、あるいは使った結果として得られる特性
(例:携帯電話に保存してある子供の写真、機器を長い間利用したあとの傷や使い古した感じ)


UXの要素を記述することによって、UX自体は表現できませんが、UXの要素とそれらの主要なカテゴリは、ユーザーが特定のUXを感じる状況を説明する時に使えます。
UXの要素は、ある特定の経験に隠された理由の説明に役立つのです。

5. 実践としてのUX

ユーザエクスペリエンスデザイン(UXD)は、人間中心設計(HCD)の原則に由来します。
一方でUXDは、より成熟した形でのHCDの実践としていくつかの重要な側面を付け加えています。

・UXの要素
従来のHCDの範疇から比べてかなり広範囲で多様です。
UXは、感情や解釈、意味、社会的側面、美的側面にも関連します。

・手法、ツール、基準
UXの要素を取り扱うためにデザインプロセスの全体を通して利用可能かつ実現可能な手法・ツール・基準を明確にする必要があります

・コンセプトおよびデザインの表現
デザイン自体が実現される前に、そこから得られる経験がどのようなものかについて人々に伝える方法を探すことが大事です。

・組織におけるUX活動の位置づけ
UXの活動は組織のビジネスと戦略における重要なパートとして徐々に認識、確立されてきています。



以上がUX白書の内容となります。

おわりに

UX白書を読んで

まず、この記事を書こうと思った経緯ですが、「UX白書カンファレンス-UX白書の今とこれから-」というイベントに参加して、UX白書についてと安藤 昌也先生の講義に感銘を受けたためです。

私は大学でUXについて研究をしてきました。
UXのイベントにも多数参加してきましたが「私の学んでいるUXと、ここでのUXデザインとでは少し違う...」と違和感を覚えていました。
ここまで読んでいただければ分かると思いますが、期間の焦点を当てる位置の違いが私が感じていた違和感の正体でした。

最近ではUXについての書籍も多く、UXを勉強できる環境が増えました。
しかし、さまざまな書籍や勉強会があるからこそ、UXの捉え方が曖昧になってる方もいると思います。(私のことです。)

UX白書について賛否両論はあるかとは思いますが、日本語訳12ページというコンパクトな内容なので、この機会に是非読んでみてはいかがでしょうか。

今回はこの辺で終わらせていただきます。